第31回管理栄養士国家試験 問題21 平成29年3月19日(日)
21 酵素に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
 (1) 律速酵素は、代謝経路で最も速い反応に関与する。
 (2) Km値は、反応速度が最大反応速度の1/4に達するのに必要な基質濃度である。
 (3) 反応速度は、至適pHで最小となる。
 (4) ペプチダーゼは、二つの基質を結合させる酵素である。
 (5) アロステリック酵素の反応曲線は、S字状(シグモイド)である。




この問題では、(5)の選択肢が過去問にない内容であり、正誤の判定が難しいと思います。(1)~(4)を誤文と判定し、削除法で解くのが良策かもしれません。

(1) 律速酵素とは、ある代謝経路の中で最も「速い」ではなく「遅い」反応を触媒する酵素のことです。国試頻出項目ですので、必ず覚えましょう。

(2) Km値(ミカエリス定数)とは、反応速度が最大反応速度(Vmax)の1/2となる基質濃度を示します。1/4ではありません。ついでにKm値(ミカエリス定数)が小さいほど、酵素と基質の親和性が大きいということも覚えておきましょう。

(3) これは明らかな誤文ですね。至適pHでは酵素反応速度が最大となります。

(4) 誤文です。ペプチダーゼとは、ペプチドを加水分解する酵素ですので、何かと何かを結合させる酵素ではありません。

(5) 正文ですが、しっかり説明しようとすると大変長くなってしまい、「国試問題を簡単に解説する」という趣旨から外れてしまいます。そのため、簡略な説明にとどめさせていただきます。まずアロステリック酵素とは何かを思い出しましょう。基質結合部位とは異なる(allo)部位にリガンドが結合することにより、酵素の立体構造(steric)が変化し、酵素活性が変化する酵素のことをアロステリック酵素といいます。アロステリック酵素の場合、横軸に基質濃度、縦軸に反応初速度をとってプロットすると、一般にシグモイド(S字状の)曲線になります。これは、生体内における酵素活性の調節に好都合な性質と解釈されています。説明の意味がわかりにくい人は、「アロステリック酵素 → シグモイド曲線」と丸暗記しておきましょう。また、この問題の正誤の判別とは直接関係ありませんが、「アロステリック酵素では、基質結合部位とは別の部位にリガンドが結合することによって、酵素活性が変化する」ということは、しっかりと覚えておきましょう。




答えは(5)です。
第31回管理栄養士国家試験 問題20 平成29年3月19日(日)
20 ヒトの生体エネルギーと代謝・栄養に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
 (1) 栄養形式は、独立栄養である。
 (2) 体の構成成分として、糖質は脂質よりも多い。
 (3) 解糖系は、好気的に進む。
 (4) 脱共役たんぱく質(UCP)は、ミトコンドリアに存在する。
 (5) 電子伝達系では、窒素分子が電子受容体として働く。




(1) これは完全な誤文です。高校の生物基礎のレベルで解ける問題です。独立栄養生物とは、無機化合物や光をエネルギー源として生きていくことができる生物のことです。分かりやすく言えば、水と二酸化炭素と光で光合成を行い、でんぷんなどの有機物質を作ることができる植物などのことです。当然ヒトは違いますね。ヒトは、他の生物が合成した有機物(炭水化物、脂質やたんぱく質など)を摂取して生きていますので、従属栄養生物ということになります。

(2) まず体脂肪率を思い出しましょう。普通は20%くらいありますね。これに対して糖質の占める割合は1%前後です。よって誤文です。たとえ糖質の占める割合がわからなかったとしても、水分が65%前後、脂肪が約20%、残りの15%程度をたんぱく質やミネラル、糖質で分け合うとすれば、糖質の割合が脂質の割合を上回らないことが常識的にわかると思います。

(3) これは深く考えすぎなければ簡単ですね。解糖系は酸素を必要とせず、嫌気的条件下で進みますので誤文です。ただ、深く考えすぎて「解糖系は酸素があってもなくても進行する。すなわち好気的条件下でも進行するから正文だ」となりかねないので、注意してください。「好気的」という言葉は、「酸素を必要とする」という意味合いですので、誤文と判定しましょう。

(4) 正文です。脱共役たんぱく質(Uncoupling protein, UCP)はミトコンドリアに存在し、H+(プロトン)の濃度勾配を解消することによって、電子伝達系と酸化的リン酸化(ATP合成)とを脱共役させます。ついでに、脱共役たんぱく質は酸化的リン酸化(ATP合成)を阻害することも確認しておきましょう。

(5) 国試頻出項目の1つです。電子伝達系では、電子は最終的に酸素に受容されます。窒素ではありません。これは必ず覚えておきましょう。




答えは(4)です。
第31回管理栄養士国家試験 問題19 平成29年3月19日(日)
19 核酸およびたんぱく質の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
 (1) アデノシン3ーリン酸(ATP)は、ヌクレオチドである。
 (2) イントロンは、RNAポリメラーゼにより転写されない。
 (3) アミノ酸を指定するコドンは、20種類である。
 (4) たんぱく質の変性では、一次構造が変化する。
 (5) プロテインキナーゼは、たんぱく質脱リン酸化酵素である。




(1) 正文です。塩基のアデニン(A)と糖のリボースとが結合したアデノシンに、リン酸が3つ結合したヌクレオチドです。ちなみに、リン酸を含まず、塩基とリボースあるいはデオキシリボースから成る物質はヌクレオシドと呼ばれます。1文字違いでまぎらわしいので、気をつけましょう。

(2) まず、ヒトなどの真核生物では、遺伝子がエクソンとイントロンとに分かれていることを思い出しましょう。いずれの部分も転写されてmRNA(メッセンジャーRNA)前駆体が合成されますが、このときに働く酵素がRNAポリメラーゼです。次にこのmRNA前駆体のイントロン相当部が切り捨てられ、エクソン相当部だけがつなぎ合わされて成熟mRNAが完成しますが、このプロセスはスプライシングと呼ばれます。つまり、イントロン部分も転写されますので、正文ということになります。(この選択肢のように、語尾が「・・・ない」と否定形で終わっている少し不自然な文章は、ほとんど誤文であることが多いです。)

(3) コドン自体は4×4×4で64種類ありますが、このうちアミノ酸を指定しない終始コドンが3種類ありますので、アミノ酸を指定するコドンは61種類となります。ただし、ここまで正確に覚えていなくても、たんぱく質を構成する普通のアミノ酸は20種類であるのに対しコドンは64種類近くあり、アミノ酸と1対1対応はしていないことを思い出せれば、簡単に誤文と判断できると思います。

(4) よくある誤文です。たんぱく質の変性では、たんぱく質の一次構造(すなわちアミノ酸の配列順序)は変化せず、二次構造~四次構造の高次構造が(不可逆的に)変化します。この立体構造の変化によって、たんぱく質が元と異なる性質を示すようになることを変性といいます。

(5) プロテインキナーゼは、たんぱく質をリン酸化する(たんぱく質にリン酸を付ける)酵素です。脱リン酸化(たんぱく質からリン酸をはずす)ではありません。これは必ず覚えておきましょう。また、「脱」の1文字が余分なだけの誤文ですので、うっかり見落として正文と勘違いしないように注意しましょう。



答えは(1)です。
第30回管理栄養士国家試験 問題71 平成28年3月20日(日)
71 消化器系の調節に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
 (1) アセチルコリンは、胃液の分泌を促進する。
 (2) ガストリンは、胃の運動を抑制する。
 (3) ヒスタミンは、胃酸の分泌を抑制する。
 (4) コレシストキニンは、膵臓からHCO3-の分泌を促進する。
 (5) セクレチンは、胃酸の分泌を促進する。




(2)、(4)、(5)の消化管ホルモンに関する問題は、基礎栄養学でよく出題されますので、特にしっかりと覚えておきましょう。

(1) まず、消化液の分泌や消化管の運動が、副交感神経の刺激によって促進されることを思い出しましょう。そうすれば、副交感神経の末端から分泌されるアセチルコリンが、胃液などの消化液の分泌を促進することが思い出せると思います。(副交感神経優位のリラックスした状態が、消化促進のためには望ましいこととの関連で、覚えておきましょう。)

(2) 逆です。ガストリンは、胃の運動を促進します。ガストリンは胃酸の分泌も促し、消化を促進します。

(3) 逆です。ヒスタミンは胃酸の分泌を亢進します。ちなみに、胃酸分泌を抑えることで有名な薬であるガスターはH2ブロッカーですが、このHはヒスタミンのHです。

(4) 膵臓からのHCO3の分泌を促進するのは、コレシストキニンではなく、セクレチンです。

(5) セクレチンは、胃酸ではなくHCO3-に富む膵液の分泌を促進します。




答えは(1)です。
第30回管理栄養士国家試験 問題70 平成28年3月20日(日)
70 遺伝子多型と倹約(節約)遺伝子に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
 (1) フェニルケトン尿症は、遺伝子多型によって発症する。
 (2) 遺伝子多型の出現頻度には、人種差は存在しない。
 (3) 倹約(節約)遺伝子とは、体脂肪の蓄積しやすい体質を生む遺伝子である。
 (4) 倹約(節約)遺伝子仮説を唱えたのは、リネン((Lynen F)である。
 (5) 脱共役たんぱく質(UCP)遺伝子は、倹約(節約)遺伝子の候補である。




(1) フェニルケトン尿症は、完全な遺伝病(先天性代謝異常)です。そして、はっきりとした病状が現れます。遺伝子多型とは、遺伝子に生じた塩基配列の変異のうち、表現型に明瞭な変化を及ぼさないものを指しますので、これは誤文です。また一般に、遺伝子多型はある集団の1%以上の頻度のものと指しますので、その点でも誤りとわかります。

(2) 遺伝子多型の出現頻度には、人種間差異が認められます。これはこのまま覚えましょう。具体例までは覚えておかなくていいと思いますが、たとえばアルデヒドデヒドロゲナーゼ2やβ3アドレナリン受容体の遺伝子多型には、明瞭な人種間差異が認められます。

(3) 正文です。倹約(節約)遺伝子とは、エネルギー消費を抑える方向で作用する遺伝子のことを指します。したがって、エネルギーの摂取量や活動量が同じならば、脂肪が蓄積しやすい(言いかえれば肥満しやすい)体質につながると考えられます。下の(5)も関連しますので、合わせて理解しましょう。

(4) リネンではなく、ニールです。

(5) 正文です。脱共役たんぱく質(UCP, Uncoupling protein)遺伝子は、電子伝達系と酸化的リン酸化(ATP合成)とを切り離す(脱共役する)作用を示します。この作用により、生体内で産生したエネルギーはATP合成には使われず、熱として放散されます。したがって、この遺伝子に変異が生じてその機能が低下すれば、エネルギー消費を抑えることになります。そのため、倹約(節約)遺伝子だと目されています。できれば理論的に覚えておきたいところですが、苦手な人は丸暗記でもいいので覚えておきましょう。





答えは(3)と(5)です。